アップサイクルは、昨今のファッション業界でも重要な役割を担っています。
1枚の服を作るために、綿などの原材料調達から製造、販売に至るまで多大な環境負荷をかけているのですが、大量生産・大量消費によって服のライフサイクルが短くなったことで、年間廃棄される服の量が増える傾向にあります。
このような問題を解決につなげるために不可欠なのが、「アップサイクル」です。
今回は、アップサイクルについての基礎知識とおすすめのファッションブランドを紹介していきます。ブランドごとの取り組みについても詳しく解説していきますので、お好みのブランドがないかチェックしていただけたらと思います。
アップサイクルとエシカルファッションの関係
エシカルファッションとは、服やその素材などを生産するにあたって環境、労働(生産者)、社会問題に配慮して生産されたファッションのこと。アップサイクルは、廃棄物を無駄にせず製品を作り出すことから、主に環境問題を解決し、持続可能な地球環境の実現に向けて大切な役割を担っています。
ここではアップサイクルの意味についてと、リサイクルとの違いについて解説していきます。
アップサイクルとは?
アップサイクルとは、捨てられるはずだった廃棄物や不用品を新たな製品に生まれ変わらせること。
素材などの特徴をいかして、デザインやアイデアなどの付加価値を加えて、商品の価値を高めます。アップサイクルのメリットは、新たな資源の使用を抑えられ、製品の寿命を延ばすことにつながるということです。
SDGs12の目標「つかう責任・つくる責任」の達成にも貢献するとして注目されています。
リサイクルとの違いは?
リサイクルとは、使い終わってでた廃棄物をもう一度、原材料やエネルギー源などの資源に戻して製品を作ることをいいます。
アップサイクルとリサイクルは他の製品を作ることに関しては共通していますが、リサイクルは原材料などに戻してから再利用をするのに対し、アップサイクルは製品の素材をそのまま再利用するという点が異なっています。
3Rと呼ばれる廃棄物を減らし資源を大切にする取り組みには、リサイクルのほかにリユースやリデュースがあります。リユースは使い終わった製品や部品を繰り返し使うこと。リデュースは製品を作るときに使用する資源を減らしたり、廃棄物が少なくて済むようにすることを指します。
アップサイクル おすすめファッションブランド10選
ファッション業界では、大量生産・大量消費・大量廃棄が問題となっています。服1着をつくるのに、水は浴槽11杯分、二酸化炭素排出はペットボトル255本製造分が必要です。その他にも服をつくるための原材料の調達(綿花の栽培など)から製造までの段階でも、CO2排出などの環境負荷がかかっています。
これらの問題を解決につなげる手段のひとつとして、私たちが新しい服の購入を考えるときにアップサイクルに取り組むブランドを選ぶことも大切です。ここでは、おすすめのアップサイクルブランドをご紹介します。好みのブランドがあるか、ぜひチェックしてみてくださいね。
Loopool
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「Loopool」は、株式会社レリアンのアップサイクル・ブランド。
新しい資源は使わず、サプライチェーン内外から出た残資源(残反)を原料として製品をつくっています。二酸化炭素排出や廃棄、大量の水やエネルギー使用などによる環境負荷を軽減することをサステナビリティとして掲げ取り組んでいます。
“What can A do?”(私たちにできることは何?)をスローガンとし、ファッションだけではなく地球上で起きている課題を解決につなげたいという想いから、地域貢献から人材支援までさまざまな取り組みを拡大していくとしているブランドです。
BEAMS COUTURE
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BEAMSのオリジナル商品などの在庫商品を、新しいアイテムに生まれ変わらせるアップサイクル・ブランド「BEAMS COUTURE」。
古着などと組み合わせて1着ずつ手仕事でリメイクしているため、同じデザインのない一点物であることが特徴です。多方面で活躍するクリエイターやブランドともコラボレーションをしており、斬新なデザインを生み出しています。
DESIGNERS, REMIX Re-made
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「DESIGNERS, REMIX Re-made」は、2002年にコペンハーゲンで立ち上げられたB Corp認証のアップサイクル・ブランドです。
B Corpとは、非営利団体が運営する国際的な認証制度のこと。環境や社会に配慮した公益性の高い、透明性や説明責任などの基準を満たした企業のみ認証を得ることができます。
DESIGNERS, REMIX Re-madeでは、デッドストックの衣類や生地に新しくデザインを加え、アップサイクルしています。
DESIGNERS, REMIX Re-made 公式サイト
DESIGNERS, REMIX Re-made Instagram
Re-Muji(無印良品)
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無印良品のアップサイクルの取り組み「Re-Muji」。
着れなくなった服や不要になった衣料品(タオルやシーツなど)を無印良品の店舗で回収して分別し、状態の良いものは手を加えてアップサイクル、そうでないものは商品の原料にリサイクルする取り組みを行っています。
服のアップサイクルには3種類あり、藍色や黒に染め直した「染めなおした服」、染められなかった服は洗って古着販売する「洗いなおした服」、リメイクして次の人につなげる「つながる服」として新しく生まれ変わらせて販売しています。
廃棄物を減らし、資源の循環させる、服を大切に着るための取り組みです。
Enter the E
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「Enter the E」は、人や環境に配慮した、リサイクルやアップサイクルに取り組むファッションブランド。
Enter the EはそれぞれEarth(地球)、Elements(4大元素)、Energy(エネルギー)、Ecosystem(生態系)、Environment(環境)を表しています。
アップサイクルでは廃盤になってしまった廃棄される生地を使い、新しいデザインの服に生まれ変わらせることで、衣類のロスを減らすといった取り組みをしています。他にもオーガニックコットンや、リサイクル素材の服も販売中です。
LOVE it ONCE MORE
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「LOVE it ONCE MORE」は「もう一度愛する」という意味。その名のとおり、工場から出る余剰糸や寄付糸を使って新しい製品を生み出しています。
カラフルな色合いと文字、模様のバランスが個性的なのが特徴。残糸のため、糸の長さや太さがバラバラで大量生産ができないため、すべてハンドメイドで一点ものです。
PLASTICITY
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『10年後になくなるべきブランド』として2020年に誕生したのが「PLASTICITY」。
廃棄されるビニール傘を、ハンドバッグなどの製品に生まれ変わらせています。日本で廃棄されるビニール傘は年間8,000万本ですが、分解しにくく再利用が難しいことから多くが埋め立てまたは焼却処分されています。
PLASTICITYは、プラスチックごみの環境問題を解決につなげるため、ビニール傘のアップサイクルに取り組んでいます。
LOVST TOKYO
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「LOVST TOKYO」は、廃棄されるリンゴでできた『アップルレザー』を使用した製品を販売しています。
青森県のJAアオレン(青森県農村工業農業組合連合会)では、原料となるリンゴを年間2万トン集荷・加工しており、そのうち搾りかすなど6,000トン廃棄されていました。この廃棄部分をレザーの原料の一部として活用し、開発したのがアップルレザーです。CO2排出量を考慮し、石油由来の原料の使用を控え環境に配慮したものづくりを行なっています。
FREITAG
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使い古されたトラックタープ(幌)や廃棄される自転車のインナーチューブなどをアップサイクルして製品づくりをしている「FREITAG」。
「We think and act in cycles(循環を考え、行動する)」を理念とし、資源とエネルギーを無駄にしないサーキュラリティへの転換を目標に取り組むブランドです。
年間340トンの使用済みトラックタープを仕入れ、バッグやアクセサリーに生まれ変わらせています。
Öffen
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靴ブランド「Öffen」は、サステナブルな地球のために、素材や製造工程を環境に配慮した方法を選んでいます。
靴のアッパー素材には透明ペットボトルでできたリサイクル糸を使用し、アップサイクルなものづくりを。
他にはシューキーパーには植物由来の生分解性プラスティックを使ったり、製造工程をミニマムにして二酸化炭素排出を減らす取り組みをしたりしています。
まとめ
アップサイクルとエシカルファッションとの関係をはじめ、おすすめのアップサイクルブランドの取り組みについてご紹介しました。
日本ではたくさんの衣服が捨てられています。それは、年間73.1万トン(2022)の衣服にもなるんです。しかも廃棄された衣服の大部分(1日あたり1,200トン(トラック120台分))は埋め立てか焼却をされていて、再利用されている衣服はわずかです。
今回ご紹介したアップサイクルブランドは、さまざまな素材や個性をいかしたものづくりを行なっています。自分の好みのスタイルのブランドがあれば、ぜひショップをのぞいてみていただけたらと思います。
そして、気に入った服や小物があれば大切に長く愛用していただけたら嬉しいです。
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