英語で『倫理的な、道徳的な』という意味のエシカルは、分かりやすく言うと『多くの人が公平で良心的な行動だと思うこと』です。
そんなエシカルは、言葉だけを聞くと難しく感じられるかもしれませんが、自分の暮らしの身の回りにあることから始められます。「エシカルな商品は高くて、お金がかかりそう」「大変そう」なので、なかなか始められないという声も聞きます。しかしながら、自分の暮らしを振り返ってみると、意外と簡単にできるエシカルなことがあったりします。もしかしたら気付かないうちに、自然とエシカルな行いをしている方もいるかもしれません。
今回ご紹介するアイディアの中で、何か一つでも、できそうなことを見つけていただければ嬉しいです。この記事では、エシカルな暮らしとお金についてと、すぐにできるエシカルな行動のアイディアをご紹介します。
エシカルな暮らしにはお金がかかる?
まず冒頭でもお話しした「エシカルはお金がかかる」というイメージについて。その理由として、エシカルな商品が一般的に売られているものに比べると高いということが挙げられます。エシカルな商品は、人や社会、環境などに配慮されたものなので、その分コストがかかり割高になりやすいのです。しかし、エシカルな商品は生活を見直して、少し工夫をすることで暮らしに取り入れやすくなります。
1. 定期的に購入している物が、本当に必要かを見直す
自分の暮らしの習慣を振り返ると、意外と無くても困らないものだったり、簡単にエシカルなものへとスイッチできるものが隠れています。毎シーズン買う洋服、化粧品、毎日食べる物や飲み物、たくさんの種類の洗剤など、普段何気なく使っているものの中で「本当に必要か?」「エシカルなものへと変えられないか?」を考える時間をつくってみます。
例えば、毎日ペットボトル入りの飲み物を買っていたとしたら、買う回数を減らすなどをして、代わりに家で作ったお茶をマイボトルに入れて持ち歩けば、プラスチックゴミを減らすことができ、節約にもつながります。あるいは、1年を通して服を買い過ぎていると気付いたら、購入頻度を減らしてみて、節約できたお金をいつもより高めの「エシカルな1着の服」を買うのに使うのも良いかもしれません。少しだけ生活を振り返り、今まで買っていた物とお金とのバランスを見直してみてはいかがでしょうか。
2. 捨てる前に「もう一度使えないか」考える
何かを捨てる時「もう一度使えないか」をゴミ箱の前でいちど考えてみます。立ち止まって考えてみると、ゴミだと思っていたものも、意外と再利用できるものです。
穴の空いた服ならダーニングして繕ったり、雑巾にしたり、使える生地を切り取ればバッグやポーチをハンドメイドできるかもしれません。空き瓶や包装紙、空き箱、紙袋なども取っておくと、リメイクして保存容器やフラワーベース、収納箱、ポスターにしたりと、さまざまな方法で再利用できます。
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3. エシカルな商品と別のものを併用する
はじめから、今まで使っていたもの全てをエシカルな商品へと変えるのは難しいでしょう。一人ひとり好みも違うので、エシカルなものが必ずしも自分に合うとは限りませんし、良いと感じなければ継続することができません。ですので、まずは現在使っているものとエシカルな商品とを併用してみます。
例えば、朝はフェアトレードのコーヒーを飲み、昼は普通のコーヒーを飲む。オーガニックコスメとそうでないコスメを一緒に使う、ということから始めてみます。いつもより高いものと併用した場合は、一緒に使うことで、減りのペースを遅らせることができ、少しだけ節約もできます。
エシカルな商品は高いイメージが強いのですが、高いものだけではありません。低コストで済むエシカルな商品もあるので、それを併用する方法もあります。例えば、環境にやさしい重曹は1kg 600円くらいです。掃除洗剤や消臭剤として使えるので、重曹をメインとして使いながら洗浄力が足りない時だけ、高めの環境にやさしいエシカルな洗剤を使う方法もあります。
重曹は、炭酸水素ナトリウム。自然界に存在する素材で、人体に無害の物質です。掃除をしたあとに排水をしても、地球環境に負担をかけません。私も実際に、キッチン・お風呂・トイレ掃除に使用しています。もう長い間、市販の洗剤を購入していません。[…]
人や社会、暮らしのエシカル
生きていく上で欠かせない人や社会との関わりのなかで、どう「エシカル」なことをすればいいのか考えてみます。皆さんの中には「エシカル」と言わなくても、自然と行っていることもあるかもしれません。
4. フードロスを減らしてみる
私たちが健康に暮らすために欠かせない食事ですが、日本では、毎年約600万トンが食品ロス(フードロス)として捨てられています。そのうち家庭からでる食品ロスは、約280万トンにも及びます。日本の家計では4分の1が食費を占めると言われていますが、一世帯(4人家族)では、年間6万円にもなる食品を捨てていることになります。食品ロスはゴミとなると、処理場に運搬され焼却されますが、その際に二酸化炭素(CO2)を排出します。また世界では、世界の全ての人が十分に食べられる食料が生産されているにもかかわらず、9人に1人は飢えに苦しんでいます。「食の不均衡」を解消するために、食品ロスをなくすことが必要です。
フードロスを減らすためにできること
- 買い物時は、「買いすぎない、使う分だけ買う」「冷蔵庫の食材在庫を確認する」「期限表示を確認する」
- 調理時は、「残っている食材から使う」「食べきれる量をつくる」「使いきれなかい食材は長持ちする方法で保管する」
- 食べる時は、「きちんと残さず食べます」。どうしても残ってしまった料理は、違う料理にリメイクしたり、お弁当に入れたりして、最後まで工夫します。
5. 地産地消、応援消費をする
地産地消や応援消費をすることもエシカルな行いです。
「地産地消」とは、地元で生産された商品を選んで地元で購入すること。地産地消を行うことで、生産者の収入につながり、その地域の活性化にもつながります。輸送にかかるエネルギーを削減できることもメリットです。
「応援消費」は自然災害にあった地域のものを積極的に購入して、被災地を応援し支援することを言います。昨今では、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で困っている飲食店や観光地などを応援するなど、自分以外の誰かの支援のためにお金を使うことを指します。
6. なるべく歩く、自転車を使う
電車やバス、飛行機からでるCO2の排出量は多く、家庭からのCO2排出量をみると「自動車」からの排出量が全体の2割を占め、「照明・家電製品などの利用」に次いで2番目に多いという結果が出ています。
外出するときの移動手段を見直して、近場のときは歩きか自転車を利用し、難しい場合は電車やバスなどの公共交通機関を利用します。どうしても自家用車でという場合には、エコドライブを心がけましょう。自転車シェアリングのサービスも増えています。旅行先でサイクリングを楽しんだり、歩いて知らない土地の風景を楽しむのもおすすめです。
7. 物を大切に扱う
普段使っている持ち物、衣服やキッチン雑貨などは丁寧に扱って、こまめに適切なケアをして長く使えるように心がけましょう。例えば、デリケートな素材の服を洗濯するときは、手洗いをする。新しい靴は専用のクリームや防水スプレーを使い、汚れがついたらすぐに拭き取る。木製のまな板は使った後すぐに洗い、きちんと乾燥させるなど。ひとつ一つの物を大切に扱うことで、愛着が湧いて大事にしたくなります。
環境にやさしい「まな板」をご紹介します。天然素材のまな板は、お手入れをきちんとすればプラスチックのまな板に比べて数年長持ちするのが特徴です。プラスチック製のまな板は、お手頃な値段で手に入れることができますが、『エシカル』と『サステナブル』の[…]
8. プラスチックゴミを減らす
世界中の海に、毎年800万トンのプラスチックゴミが流出していると言われています。2050年までに海の中のプラスチックゴミの重量が、魚の重量を超えるという試算も報告されました。海に流れ込んだ「海洋プラスチック」は、生物や自然環境、人間へ様々な影響を及ぼす恐れがあります。プラスチックの使用を減らすことは、地球に住む生物や人間すべてに、やさしい環境づくりをすることに繋がります。
プラスチックゴミを減らすためにできること
- 過剰包装していないものを選ぶ
- マイボトル、マイバッグを使う
- 天然素材を選ぶ、など
前回の記事「マイクロプラスチックとは? / あたえる影響と問題について考える」につづき、今回は日本のプラスチックごみの現状を知り、普段の生活の中で地球に住む生物や人間ひとりひとりの健康のために、マイクロプラスチック(プラスチック)ごみ問題と[…]
9. ゴミは分別して捨てる、ゴミを拾う
ゴミをキチンと分別し、リサイクルできるものを増やして処理することで、ごみとして燃やすよりも温室効果ガスの排出量を減らせます。普段の生活からゴミがなるべく出ないように心がけ、それでも出てしまったゴミは、お住まいの地域、自治体のごみの分別方法にならって、きちんと決められた場所に出しましょう。リサイクルできるものはきちんと分けて、処理します。
さらに道端で落ちているゴミを見つけたら、拾ってゴミ箱に捨てます。ゴミを拾うことで、街をキレイにし、自然環境を汚染から守ることに繋がります。
10. 隣にいる人を大切にする、困っている人を手助けする
「エシカル」とわざわざ言う必要のないことかもしれませんが、自分の家族や友人など身近なひとが職場で不当な扱いを受けたり、学校で差別にあって悩んでいたり、将来に不安を感じていることがあれば、相手の状況を理解し、状況を改善する手助けができないか考え、寄り添います。
日常生活では、街の通りやレストラン、デパート、電車などでたくさんの人と接しています。もしも困っている人を見かけたら、声をかけてみます。階段で重い荷物を移動させるのに困っている人、具合が悪そうな人、マタニティマークやヘルプマーク、ハート・プラスマークなどを身につけている方がいれば、お手伝いができないか聞いてみましょう。
さいごに
私がエシカルな暮らしをして変わったことは、たくさんあります。新しい服はほとんど買わなくなり、代わりにダーニングやリメイクして長く着れるようにしたり、お肉を食べる回数を減らして健康や食生活を見直し、植物性食品のレシピを学んだり、プラスチックの使用を減らしてゴミを減らすことができるようになったりと、ひとつ一つの行いに対して、これって「エシカルかな?」と意識を向けることで、新しいことにもチャレンジするようになりました。地球環境や動物、人、あらゆるものに対して思いやりを持ち、また製品を選ぶ時は、そうした思いやりがあるものを選んで日常に取り入れることで、私たちの気持ちもやさしくなって生活が送りやすくなります。
もしこれからエシカルな暮らしを始められる場合は、皆さんの生活で自然に無理なく取り入れられるものから始めていただき、そのライフスタイルが心地よくて興味が湧いたら、少しずつ取り入れるものを増やしていき、エシカルな暮らしを続けていっていただけたらなと思います。
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