前回の記事「お肉と環境問題の関係とは?」では、畜産が与える環境への影響についてご紹介しました。そして今回は、実際に問題を解決していくためにできることとして、『お肉の代わりに何を食べたらいいのか』と『その食品の栄養バランス(主にたんぱく質)』についてご紹介していきたいと思います。
近年、植物性代替肉の種類が増えており、レストランやスーパーでも見かけるようになりました。代替肉を使った料理のレシピも、様々なWEBサイトで紹介されています。食生活は人さまざまですので、ご自身の健康や体調に合わせてフィットしそうな食材を、記事でご紹介するお肉の代用食品から選んでいただけたらと思います。
お肉が農場から私たちの食卓にわたるまでの間、どのくらい環境に負荷を与えているのかご存知でしょうか?実は家畜として育てられる牛・豚・鳥などには、たくさんの資源(土地、穀物、水など)が使われていて、お肉が生産されるなかで、たくさんの温室[…]
お肉の代わり、植物性食品の栄養バランスは?
動物性と植物性に共通して含まれる栄養素に「たんぱく質」があります。糖質、脂質と合わせて三大栄養素と呼ばれるたんぱく質は、体内でからだの組織をつくる働きをする、人間の身体活動に欠かせないエネルギー源です。たんぱく質は、摂取すると体内でアミノ酸に分解、吸収され、内臓、髪、爪、皮膚、ホルモンや酵素などの主な成分となります。人の体の約60%は水分、15~20%はたんぱく質でできているので、たんぱく質は人間にとって大切な栄養素なのです。
お肉や魚などの動物性食品に含まれる動物性たんぱく質の多くのものには、9種類の必須アミノ酸が含まれています。身体を構成するアミノ酸は20 種類ですが、そのうち11種類は体内で作り出すことができ、9種類は体内で合成できないため食事から摂取する必要があります。ただ、動物性たんぱく質には脂質が多く含まれる食品が多いため、摂り方には注意が必要です。
その点、植物性たんぱく質は脂質が少なく、肉類に比べると余分なカロリーを抑えてタンパク質を取ることができます。植物性食品には、ビタミンやミネラル、食物繊維も豊富なものが多くあり、不足しがちな栄養を補うことができます。必須アミノ酸に関しては、9種類すべてをバランスよく摂取するためには、複数の植物性たんぱく質食品を組み合わせる必要があるのですが、穀物と豆類などを一緒に食べれば、必須アミノ酸のバランスを高めることができます。
お肉の代わりになる、植物由来の食材
それでは、実際に植物性たんぱく質の摂れる食材をご紹介していきます。料理や食事に使うときには、1日に必要なたんぱく質の量が、成人女性で50g、成人男性で60gとされていますので、1日の食事の栄養バランスを見ながら、取り入れていただけたらと思います。
豆類
豆腐
スーパーやコンビニでも手に入る「豆腐」。お味噌汁や、冷奴、麻婆豆腐などさまざまな形で食べられます。木綿豆腐1丁(300g)には、約20gのたんぱく質が含まれていて、ビタミンやミネラルも豊富です。豆腐のたんぱく質は、血圧・コレステロールを下げ、また大豆サポニンは活性酵素を除去し便通改善の効果があります。
大豆ミート
主原料が大豆のお肉のように加工された「大豆ミート」はミンチやバラ、スライスタイプと、料理に合わせて種類を選ぶことができます。たんぱく質が大豆ミート100gあたり約50gとたいへん豊富です。ノンコレステロールでビタミン、ミネラル、食物繊維も含まれていて、お肉よりも低カロリーなので健康志向の方に支持されています。
ネクストミーツ
ネクストミーツは「NEXTハラミ」や「NEXTカルビ」といった焼肉風の植物肉です。その他にNEXTチキンやNEXT牛丼などがあり、最近では次世代肉として注目を浴びています。主な原材料は大豆で、NEXTハラミとカルビでは、通常のお肉と比べて2倍のたんぱく質が含まれています。動物性の原料は一切使用していないので、ヴィーガンの方も食べられる植物性のお肉です。
ひよこ豆
ヒヨコのような形から名付けられた「ひよこ豆」。ひよこ豆100gにはたんぱく質が40g含まれています。その他ビタミン、ミネラル、女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンなどが含まれていて、栄養が豊富です。高たんぱく質で低脂肪なひよこ豆は、中東料理でよく使われています。
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木の実・ナッツ
アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、クルミなどナッツには様々な種類があります。ナッツの種類によって栄養の特徴は異なりますが、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが含まれており、総合的に栄養価が高くなっています。抗酸化作用があるので、老化防止にも効果的です。調理せずにそのまま食べられるので、ちょっとした間食にも、おすすめの食材です。ナッツは塩分や味付きではなくて「無塩で素焼き」のものを選び、食べる量は1日手のひら1杯分を目安にして摂取しましょう。
穀類
玄米
玄米は、栄養が優れていることでも知られていますが、たんぱく質もご飯茶碗1杯(150g)に4.2g含まれています。1日3食、玄米を食べた場合、約13gのたんぱく質を摂取できます。他のたんぱく質のおかずと合わせて取り入れると、よりバランスが良くなります。
そば
蕎麦100gにたんぱく質は12g含まれています。蕎麦は必須アミノ酸がバランスよく含まれていて、小麦や白米と比べてもアミノ酸スコアが高く、炭水化物の代謝を促すビタミンB1や整腸作用のある食物繊維も多く含まれています。
野菜・果物
ブロッコリー
ブロッコリーは、たんぱく質(ブロッコリー100gにたんぱく質4.3g)やその他ビタミン、ミネラル、食物繊維と栄養も多く含まれていることから、筋肉をつけたいという方に人気の食材です。なかでもビタミンCの量はレモン(100g)よりも多く、ブロッコリー100gにビタミンCが120mg含まれます。ビタミンCは、コラーゲンの生成を促すので美肌づくりや抗酸化作用があるので老化防止にも役立つ栄養素です。
アスパラガス
アスパラガス100gには、2.6gのたんぱく質が含まれます。疲労回復作用のあるアスパラギン酸が豊富で、高血圧や動脈硬化の予防効果のあるルチン、ビタミンも含まれています。
アボカド
フルーツのなかでも、アボカドは栄養価が高いことで知られています。アボカド100g中にたんぱく質は2.5gで、アミノ酸バランスが大変良く、ビタミン、ミネラル、食物繊維も含まれています。アボカドの豊富なビタミンEは体の免疫力の強化や老化防止に役立ち、オレイン酸は悪玉コレステロールを減らす効果があります。
まとめ
上記でご紹介した食品以外では、納豆、枝豆、トウモロコシ、バナナなどもたんぱく質やその他の良質な栄養素を含んだ食べ物です。
植物性たんぱく質だけでなく、動物性たんぱく質を取りたいという方には、昨今注目を浴びている環境負荷の少ない「昆虫食」を取り入れてみるのも良いかもしれません。昆虫食のなかでも、コオロギはお肉に比べて高タンパクな食材です。なかなか料理では使いにくいかもしれませんが、最近はお菓子状になっているものが売られています。(FAOの報告書では、食糧問題解決の選択として昆虫食が有用と公表しています。)
代替肉や植物ベースの食事は無理にではなく、自分のライフスタイルや食生活に合わせて取り入れましょう。まずは3食のうち1食を代替肉にしたり、料理に使う肉の量をいつもより減らして植物性食品も一緒に使ってみるなど工夫して、楽しく取り入れていただければと思います。さまざまな植物性食品を試していただくことで、料理のレパートリーが増えたり、新しい食材の発見につながれば嬉しく思います。
ミルクには、動物性と植物性とがあります。牛乳は牛から搾った乳なので動物性ミルク。オーツミルク、豆乳、アーモンドミルクは麦や大豆、ナッツが原料で植物性ミルクとなります。牛を育てるための畜産業は環境負荷が大きく、温室効果ガスの排出や、森林破壊、[…]
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