今後数十年の間に、世界の人口増加や気候変動などが原因で、水資源に影響を与えて水不足がより深刻化すると言われています。現在、世界人口の40%に水不足の影響を与えており、2040年までに世界の子ども約4人に1人が、水不足の影響を受けると予測されています。
SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」にあるように、2030年までに水不足を緩和して、誰もが安全できれいな水を利用できるようにすることが求められています。きれいな水へアクセスできるようにするには、森林や川など水に関する生態系を保護・回復し、排水処理や水の再利用技術の開発、水の汚染を減少させるなど様々な取り組みを行う必要があります。
今回は水不足の様々な原因を解説し、水不足を解決へつなげるために私たち一人ひとりに何ができるのか考えていきます。家庭でできる節水方法や生活排水に関するポイントもまとめていますので、ぜひご覧ください。
水不足問題の原因
地球には水が豊富に存在していると思われていますが、そのほとんどは海水で、淡水(=人間が利用可能な水)は、わずか2.5%程度しかありません。今後数十年の間に、世界の人口増加や気候変動などが原因で、水不足がより深刻化すると言われています。ここでは、どうして水不足が起こるのかを詳しく解説します。
気候変動によって起こる、水不足問題
気候変動とは、さまざまな原因によって長い期間にかけて気候と気象が移り変わることを言います。気候変動の要因には、自然要因と人為的要因とがありますが、1800年代以降は人為的な要因である人間活動による二酸化炭素などの温室効果ガス排出や森林破壊などが気候変動へ大きな影響を与えています。大量の温室効果ガスが大気中へ排出されると地球表面の気温が高くなる「地球温暖化」という現象が起きます。
この地球温暖化が進むと、大雨や洪水、干ばつなどの異常気象を引き起こします。温暖化によって海面が上昇すると地下水が塩水化して飲み水や農業用水の水源を失ったり、また気温が高くなると降雪量が減って融雪による水資源量が減るため、水不足問題が深刻化します。
水紛争、人口の増加によって水不足に
2021年の世界人口は78憶7500万人と、2020年より8000万人増え、人口は増加傾向にあります。2050年には約97億人になると予測されており、人口増加に伴って水の使用量が増えることが推定されます。いま世界では、14億2,000万人以上(4億5,000万人の子どもを含む)が水への脆弱性が高い地域で暮らし、世界の子どもの5人に1人が生活に必要な水を十分に得られていない状況です。
また水の問題は、世界各国で起きている水紛争の引き金になります。水紛争の主な原因は、水資源配分、水質汚濁、 水の所有権、水資源開発と配分の問題です。国際河川のナイル川は11カ国に流れていますが、これまでダム建設や水配分に関しての水をめぐる争いが起きていました。2021年には、エチオピアがナイル川上域で建設中のダムに貯水を開始したことで、ナイル川下流2カ国エジプトとスーダンが水不足を懸念し、貯水期間や水量制限などに関する交渉をしましたが、難航し今も対立は解消されないままです。
武力紛争が起きた結果、水不足が深刻化することがあります。水を供給する井戸や水道、浄水場などが紛争によって破壊されると、人々は安全な水を得られなくなるのです。イエメンでは、2015年以降の紛争の激化で水道施設が破壊され、多くの人々が安全な水へのアクセスが不可能になりました。シリアでは、2016年だけで給水ポンプ破壊や水源汚染による意図的な断水がアレッポ、ダマスカス、ハマなど様々な地域で30回以上発生。約1500万人が、安全な水を必要とする深刻な状況に陥っています。
大量生産の経済システムも水不足の原因に
水不足問題を解決につなげるには、気候変動対策をするのと同時に、大量の水を使って生産される食品や衣料品、生活用品などを大量生産・大量消費・大量廃棄する経済システムについて、私たち一人ひとりが見直していく必要があります。
ファッション業界では、毎年9,300億立法メートルの水が使用されますが、これは500万人の生存を可能にする量です。廃水に関しては全世界の20%をも占め、多くの水を使用し廃棄されていることが分かります。さらに私たちが食べている食材に、どのくらいの水が使われているかをバーチャルウォーター(仮想水)で計算すると、牛肉1kgには20,600L、鶏卵10個は1792L、お米1kg(7合)は3,885Lの水が必要ということが分かります。このように、食料を生産したり衣料品を作るために、たくさんの水が使われているのです。
水不足問題解決のために、私たちにできること
ここでは、世界でどのくらいの人々に水不足の影響が出ているのかと、日本の水輸入の問題を見ていきます。それから、実際に水不足の問題を解決するために、私たち一人ひとりが生活の中で、何が出来るのかを考えていきたいと思います。
水ストレスと日本の水輸入
水ストレスは、水需給が逼迫している状態の程度を表す指標で、「人口1人当たりの年間利用可能水量」が最低基準の1700tを下回ると、日常生活に不便を感じる『水ストレスの状態』であることを表します。いま水ストレスは世界の20億人以上に影響を及ぼしていて、2050年には世界人口の約40%が水不足や水ストレスにさらされると予想されています。
日本の食料自給率は37%(2020年)と低く、食料の多くを輸入に頼っています。海外から食料を輸入するということは、その生産・加工に必要だったはずの水を、日本国内で使用せずに済んだということになるのです。輸入した食料を日本国内で生産した場合、どのくらい水が必要になるかを推定するバーチャルウォーター(仮想水)を見てみると、日本の仮想水の年間総輸入量は640億m3/年で、日本国内の年間水使用量が約831億m3となるので、77%という多くの水を海外に依存していることが分かります。
家庭でできる節水
私たちが使う水は、河川水が主な源となっています。日本の年平均降水量は1,720mmと世界平均を上回る量ですが、他国と比べて面積の割に人口が多いので、人口一人当たりでは世界平均を下回ります。世界の中でも日本は水を多く使用しており、日本人1人1日あたり世界平均の約2倍も水を使っています。
日本の家庭で1人が1日に使う水は平均214L。水の使われ方を見ると、お風呂が40%と最も高く、トイレ21%、炊事18%、洗濯15%となっています。生活に欠かせない水ですが、限りある貴重な水資源を大切に使うために、実際にどう取り組めば良いのか工夫のポイントを見ていきましょう。
お風呂場で節水
シャワーを流しっぱなしにしない
シャワーで髪の毛や体を洗うときにシャワーを使っていない時は、こまめに水を止めて節水しましょう。シャワーを3分間流しっぱなしにすると、約36ℓの水を使います。シャワーを節水したい時は、専用のシャワーヘッドを取り付けて水量を減らすのも効果的です。
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お風呂の残り湯を再利用する
浴槽によりますが、お風呂の水は大体180ℓ〜200ℓの量になります。残り湯を洗濯に使ったり、拭き掃除や洗車、樹木への水やりに使いましょう。
キッチンで節水
食材・食器を洗うとき流しっぱなしにしない
食器洗いで水を5分間流しっぱなしにすると、約60ℓの水を使います。食材は容器に溜めた水で洗ったり、食器は水に浸けて汚れが落としやすくなってから洗うと良いでしょう。
油汚れのあるフライパンは汚れを落としてから洗う
油で汚れた食器やフライパンは、紙や布で汚れを拭き取ってから洗うと洗剤と水の節約につながります。
洗面所で節水
歯磨きの時は、コップを使う
歯を磨くときは、コップに水を汲んで使うようにします。30秒流しっぱなしにすると約6ℓの水を使いますが、コップの水を使うようにすることで、約5ℓ節水できます。また、洗顔のときも水を流しっぱなしにしないように心がけましょう。
水洗トイレのレバーを使い分ける
水洗トイレの洗浄レバーの大小を適切に使い分けるだけで、節水につながります。
生活排水、汚れた水を流さないようにする
生活排水とは、炊事や洗濯など日常生活で排出される水のことです。私たちが調理で使う調味料や、シャンプーなどを汚れたまま排水すると、川や海の水を汚します。そして汚れた水を魚がすめる水質にするのに、たくさんの水が必要となりバスタブ(300L)であらわすと、味噌汁1杯200ml=バスタブ浴槽4.1杯、シャンプー1回分4.5ml=バスタブ0.67杯にもなります。貴重な水、川や海を守るために家庭で水をなるべく汚さないように取り組みましょう。
家庭でできる生活排水の取り組み
- 食事や飲み物は作りすぎず、残さないようにする。
- 食器やフライパンについた汚れは紙などで汚れを拭き取ってから洗う。
- 排水溝にネットをつけるなどして、食べ残しや調理くずが流れ出ないようにする。
- 洗剤やシャンプーを使いすぎないようにする。
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まとめ
いま世界ではたくさんの人々が、水ストレスを抱える国で暮らしています。SDGs目標にもありますが、すべての人々がキレイな水を毎日安心して使えるように、世界の国や企業が取り組むのはもちろんですが、私たちも日々の暮らしで心がけることで、水を守ることにつなげることができます。
衝撃的なのは、日本人は1人1日あたり世界平均の約2倍も水を使っているということです。どこに行っても蛇口をひねれば水が出てくる環境にあると、水の大切さを忘れてしまいがちですが、今回の水不足問題について知っていただき、水の使用時に節水を少しでも意識していただけたら嬉しく思います。水を出しっぱなしにしないように気を付けるだけでも、何リットルという水を節約できます。
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