砂糖とは?/ 日本の砂糖について
お砂糖の原料は「サトウキビ」と「てん菜」という植物です。サトウキビはイネ科で、温暖な地域(日本では沖縄県や鹿児島県の南西諸島)で生産されています。てん菜はヒユ科で、温帯の冷涼な地域(日本では北海道)で育ちます。
日本のお砂糖の原料は、約3〜4割は国内で生産され、残りの約6〜7割は海外から原料糖のかたちで輸入しています。家庭で使われる砂糖は約10%ほどで、その他はパン・菓子類が約40%、清涼飲料が約20%と製品のために使われています。
環境問題①:森林破壊と土壌浸食
それでは、砂糖が与える環境への影響を見ていきましょう。まずは森林破壊と土壌侵食の問題についてです。サトウキビの栽培には広い土地が使われていて、森林が伐採され生態系に悪影響を及ぼしています。また土壌浸食という土地が使い物にならなくなる事も深刻で、砂糖の原料となるサトウキビ等の栽培の持続が難しい状態になっています。
サトウキビ栽培と森林破壊
世界の砂糖生産量(2021年)を見てみると、生産量の多い国は、1位ブラジル、2位インド、3位EUとなり、世界最大の砂糖生産国であるブラジルでは森林破壊が深刻な問題です。森林伐採による土地の開墾は、生き物やその生息地を失うだけでなく、生態系機能にも影響を及ぼします。
ブラジルの大西洋岸森林は、サトウキビ農業のために森林が伐採された結果、元の森林地帯がわずか7%しか残っていない状況です。今後予測される世界的なサトウキビの需要を満たすために、2050年までに約50%の土地を耕作し増やす必要があると言われています。
農業収穫量に影響が出る「土壌浸食」
土壌浸食も問題となっています。土壌浸食とは、降雨や風、流水などにより土が運ばれて、土地が荒れ果てて使い物にならなくなることを言います。サトウキビを栽培しているほとんどの地域(熱帯地域)で土壌浸食が起きており、そのせいで農業収穫量に影響が出たり、サトウキビ等の栽培の持続が難しくなる可能性が出てきます。それから収穫時の土壌損失が懸念されているのですが、シュガービート総収穫重量の10〜30%が土に当たり失われています(サトウキビの場合は3〜5%)。
栽培の現場で使用される重機によっては土が締め固められてしまい、水と空気と栄養の浸透率を低下させて、土とそこに生息する生物の状態を悪化させます。水の浸透が減少すると、水の流出率が増加して洪水につながる恐れがあります。
環境問題②:水の大量使用と灌漑、水不足への影響
環境問題③:農薬・肥料の使用による被害
サトウキビやてん菜を栽培するために農薬や肥料を使いますが、この農薬の使用により人々の健康に影響がでたり、肥料を使うことで温室効果ガスが発生するという問題が起きています。また砂糖へと加工する時に出る汚染水の排水も問題です。
農薬中毒による被害の発生
肥料の利用が温室効果ガスの発生につながる
地下水の汚染は日本でも起きています。鹿児島県最南端の与論島の主産業はサトウキビ栽培ですが、畑で過剰に肥料が使われると、サトウキビに吸収されなかった肥料の栄養分は、雨や灌漑水に溶けて地下に染み込んで地下水を汚染します。この地下水は海底から湧き出して、海中の栄養を増やして海水を富栄養化しサンゴを減少・死滅させる原因となり、サンゴの海を汚します。
砂糖の製造による汚染水の排水
サトウキビとてん菜を加工して、砂糖を製造する際に出る汚染水が排水されると、川や生物に悪影響を与える可能性があります。環境保護に関する法律が十分整備されていない一部の国では、製糖工場が清掃されると大量の有機物が放出され、直接川に流れ出ますが、サトウキビの製糖工場から排出される水は、有機物が比較的豊富に含まれています。水中の有機物の分解により、水に溶けている酸素濃度(溶存酸素濃度)が低下し、淡水に住む生き物に悪影響を与えます。排水には、重金属、油、グリース、そして洗浄剤などの汚染物質が含まれることがあります。
ネパールのゴーラクプルでは、2つの製糖工場と蒸留所からの不適切に処理された水が小川に排出され、小川の水は飲用水、入浴、そして灌漑として使用することができなくなりました。
また製造において水がたくさん使われているという問題もあります。サトウキビの精製砂糖を1ポンド(約454g)の作るために、213ガロン(約968ℓ)の水が必要です。これは、小さじ1杯の砂糖に約34ℓの水が使われるという計算になります。このように砂糖を製造するためには、大量の水が使われています。
環境問題④:焼き畑による大気汚染
砂糖を生産する多くの国では、サトウキビの焼き畑が行われます。刈り取り、収穫後の栽培、そして害虫駆除を容易にするため、サトウキビ畑は収穫直前に焼かれるのです。この焼畑は、大気汚染を引き起こし、土壌を劣化させます。
タイでは大気汚染が深刻な問題となっていることから、タイ政府は砂糖を収穫する機械であるハーベスタの導入を支援をはじめ、2019年2月に2022年までに焼き畑の割合を5%以下に削減するという目標を掲げています。
土壌の劣化については、持続可能でない焼き畑がされると、土の微生物の活動と土の物理的・科学的特性が低下して土壌の質が悪化します。土の状態が悪いと回復が難しくなり、その土地を利用しての栽培が難しくなるため、別の土地へ移動する必要がでて森林を伐採します。こうした焼き畑は、森林破壊の原因の一つとなっています。
環境問題⑤:生物多様性に欠ける土地、生息地の喪失
砂糖の原料となる作物をつくる土地は、生物多様性に欠けています。これまで解説してきたように、森林伐採や汚染水の排出、農薬・肥料の使用、焼畑によって生物多様性が脅かされているのです。
サトウキビ畑に生息する鳥類や哺乳類などの脊椎動物は、 たびたび有害生物と見なされて追い出すなどの対策が取られますが、多くの動物は雑草や害虫の天敵として有益かもしれず、(無害の)野生生物は、雑草や害虫を重要な餌資源として、食物連鎖や農業生態系のバランスに対して重要な役割を果たす可能性があります。このように生物多様性は、農業生態系の主要な機能とプロセスを維持し、食料の生産を支援するために必要です。
砂糖産業によるダムの建設や、耕作地から流出した水の影響も出ています。オーストラリアの砂糖産業が関わったバーデキン川、タリー川、バロン川へのダム建設により、グレートバリアリーフ ラグーンへの淡水の流れを変えてしまいました。サトウキビ畑に大雨が降った後は、流れ出る水に堆積物と水の栄養を増加させ、これが海に流れ込みます。この流水は水質を低下させ、サンゴ礁に影響を与えます。
- 1
- 2