砂糖をまぶしたドーナツ

砂糖と環境問題の関係とは?/ 地球にやさしい選択をしよう

砂糖の環境問題を解決するために

サトウキビ畑

生産、製造時にできること

効率的な「灌漑システム」を使う

より良い灌漑システムを導入し、システムを土壌の種類や気候、農場の管理に適合させることで、水を効率よく生産することができるようになります。効率的な灌漑システムを使えば、水利用効率が向上するので、環境やコミュニティなど他のニーズに水を利用できるようになるでしょう。

点滴灌漑を使う

点滴灌漑とは、農地に細い灌水チューブを農業の灌水用に張り巡らせ、土壌表面や根群域に水滴状になるように流量を絞り、直接ゆっくり与える方法です。点滴灌漑を使用することで、水や肥料の消費量を最小限にすることができます。農薬についても、最も毒性の低い農薬を使用で済みます。農薬や肥料の使用を控えることができれば、環境負荷を減らし、人や生物に悪影響を及ぼす可能性を小さくすることができます。

モーリシャスとオーストラリアの研究では、点滴灌漑を使うことで、サトウキビの生産性に影響を与えることなく、窒素肥料を25〜50%削減できることが示唆されています。またタイとインドでは、点滴灌漑を利用したことで、収量が約20%増加したことが分かっています。

化学肥料の使用を減らす

化学肥料(窒素肥料)を長年使用し続けたり乱用すると土が荒れて固くなります。また作物に吸収されなかった化学肥料は温室効果ガス(一酸化二窒素,N2O)を発生させます。そのため、化学肥料の使用を減らして適正な施肥量を守る、堆肥や有機肥料を施用することが推奨されます。堆肥などの有機物は、土の中の微生物の働きで分解されて養分に変わり、土壌を改善する効果があります。即効性はありませんが、効果が長く持続する肥料です。

その他の方法

川と山

  • 輪作をする
サトウキビは単一栽培(モノカルチャー)という農業形態で栽培されます。単一栽培は、大量生産することができるので輸入国側としては安定して得ることができ、開発途上国の安価な労働力で安い値で買うことができます。しかし単一栽培では、生産者たちは自分達で食べる作物を育てることができないので、単一作物を販売することで生計を立てるしかありません。また単一栽培では、森林伐採、農薬・化学肥料を使うことによる水質汚染、土壌侵食など環境問題の原因にもなっています。
そのため輪作という、同じ土地でいくつかの種類の作物を年数ごとに循環させて、栽培する方法を取り入れることが重要となってきます。輪作を取り入れることで、土壌の養分の状態を保ち、土壌・作物の病気の発生を減らし、持続可能な農業を行うことができます。
  • 製糖工場の排水処理の基準強化・技術の取り入れ

製糖工場から出る排水は処理技術の高いシステムを取り入れたり、排水基準を強化する規則を作ることで、河川に汚染水が流れるのを防ぎ、地域の生態系(河川など)を守ることにつながります。

私たちの暮らしの中でできること

砂糖をまぶしたドーナツ

環境に配慮された砂糖、認証された砂糖を選ぶ

お店で砂糖を選ぶときに、メーカーが環境へどのような取り組みをしているか見てみて、「応援したい」と思える砂糖を選ぶようにすると良いでしょう。さとうきび認証では、社会的・環境的・経済的持続可能性の向上を目的としたBonsucro認証がありますが、日本ではこの認証取得をした製品を見つけることは難しいため、企業の取り組みを調べる必要があります。

以下に、スーパーでよく見かける「日本製糖メーカー」の取り組みページをまとめましたので、参考にされてください。

製糖メーカー参考ページURL
日新製糖環境に配慮した事業プロセスの追求
責任ある原材料調達の実現
日本甜菜製糖CSR情報 環境
三井製糖環境マネジメント
伊藤忠製糖環境への取り組み

オーガニック砂糖やフェアトレードの砂糖を選ぶ

黒糖

農薬や化学肥料を使わずに、有機栽培されたサトウキビやてん菜のお砂糖を選ぶと良いでしょう。さらにフェアトレードのお砂糖を選べば、生産者の生活と自立支援につながります。お砂糖の中でも、精製されていないミネラルが豊富な黒糖やてんさい糖、キビ糖がおすすめです。以下にオーガニックやフェアトレードのお砂糖で、オススメのものを選びました。普段のお料理やお菓子作りに取り入れてはいかがでしょうか。

きび糖

  • 有機JAS認証 最古の有機砂

アルゼンチンの肥沃な大地で育てた「さとうきび」でできた砂糖。自然な甘みが特徴で、少量でも満足できます。脱色には化学薬品や塩酸など一切使用せず、植物(葦)由来の脱色作用を利用しています。安全で安心の有機砂糖です。

  • 有機JAS認証 むそう 有機砂糖


ブラジルサンパウロ近郊の広大な農場で栽培されたサトウキビから作られた有機砂糖。コーヒーや紅茶に入れたり、お菓子作りに使うのにオススメな砂糖。

てんさい糖

  • 有機JAS認証 むそう 有機てんさい砂糖


リトアニアの広大な大地で有機栽培された、甜菜(砂糖大根)を100%使用しています。さっと溶けやすく雑味のないやさしい甘みです。

黒糖

  • IFAT(国際フェアトレード連盟)認定 マスコバド糖

IFAT認定を受けた、フィリピン・ネグロス島で生産される純黒糖。サトウキビを絞って煮詰め、太陽熱で自然乾燥しています。糖蜜分離や精製を一切していない含蜜糖なので、サトウキビ本来の風味やミネラルが残されています。やさしい甘みとコクがあり、あっさりとした後味です。マスコバド糖は、生産者の自立を支援するために始まり、できるだけ有機的な方法で生産することに取り組んでいます。

  • 有機JAS認証 カントリーハーヴェスト 有機黒糖


有機栽培のサトウキビを使用して、低温低圧法で砂糖酵母を自然のままバランスよく残した有機シュガー。黒糖本来の風味で、褐色を帯びた黒色の砂糖で。精製していないので、ビタミン、カリウム、カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。

  • 有機JAS認証 上野砂糖 有機黒糖

化学農薬や化学肥料を使用せず、自然の力だけで育んだ有機サトウキビを使用した黒糖。着色料などを一切使用しておりません。味はクセがなく、コクのある甘みが特徴。

砂糖を使いすぎない、適量を使う

スプーン1杯のブラウンシュガー

今回紹介したように、「砂糖」生産から加工そして食卓に渡るまで様々な工程を得て、環境や生産者の人々に影響を与えて出来上がります。貴重な砂糖は、使いすぎないように常に適量を心がけ大切に使いましょう。飲料やお菓子を買う時も、砂糖がどのくらい使われているか「栄養成分表示」を確認します。栄養成分表示では、『炭水化物』『糖質』『糖類』を見てみるとわかります。

糖分の摂りすぎは、太りやすくなる、肌荒れが起きる、老化が加速する、気分が落ち込みやすくなるという症状の原因となります。食事は糖分に偏らない、栄養バランスの良い食事を心がけるようにします。

砂糖の作り方(原料糖から精製糖)を見ていただくと、こんなに沢山の工程を経ているということに驚きます。以下の動画からご覧ください。

 SCIENCE CHANNEL 砂糖ができるまで

まとめ

消費者の私たちは、砂糖原料の生産や工場での加工時には手を加えることができませんが、今回紹介した様々な問題を認識して生活し、どうしたら改善できるのかを考えながら行動することが大切です。

また、砂糖に関わる問題は今回取り上げたものだけではなく、ブラジルの森林破壊が進む原因としては、サトウキビの生産は砂糖の原料としてではなくバイオエタノールの原料を目的として栽培されていることがあります。バイオエタノールとは、サトウキビやとうもろこしなどのバイオマス資源を発酵させ、蒸留して作られるエタノールのことです。バイオエタノールはバイオ燃料の一種ですが、バイオ燃料はカーボンニュートラル (二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量が同じで、プラスマイナスゼロの状態になる)で、環境にやさしいと言われているのですが、実際に森林破壊をしてサトウキビを生産していることから、本来森林に吸収されるはずだった二酸化炭素が大気中に残ることになり、カーボンニュートラルという部分では疑問を感じられます。森林バイオマスに関しては、石炭、石油、ガスよりも多くの温室効果ガスを排出するという報告書が出ています。

児童労働の問題もあります。中南米、アジア、アフリカの地域では、サトウキビ収穫の機械化が進まず、児童労働が発生するリスクが高まるとされています。作業中の怪我や、薬品による健康被害につながることもあり、フェアトレードやサステナブルな農業への切り替えが必要です。

食事に欠かせない「砂糖」。どうすれば地球や社会、人、生物にとって優しくて良い状態になるのか、一緒に考えてみませんか?

参考・引用
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